筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経が障害されることで、筋力の低下や筋萎縮が進行する神経難病です。
手足の動かしにくさや歩きにくさ、話しにくさ、飲み込みにくさなど、症状の現れ方は人によって異なります。
ALSでは、身体機能の変化に合わせて、日常生活の動作や生活の質(QOL)を維持するためのリハビリテーションが重要です。
この記事では、ALSの基礎知識から主な症状、理学療法評価、リハビリテーションの方法まで、理学療法士の視点から解説します。
ALSとは何か、どんな役割があるか
●ALSとは
脳や脊髄にある運動ニューロンが徐々に障害される、進行性の神経難病です。
運動ニューロンは、脳からの指令を筋肉に伝え、身体を動かすために必要な神経で、これが障害されると筋肉に十分な指令が届かなくなり、筋力低下や筋萎縮が生じます。
なぜ発症する?
ALSの発症原因は、現在も十分には解明されていません。
主に次の2つに分類されます。
- 孤発性ALS: 家族内に同じ疾患の人がいないタイプ。大部分を占めます。
- 家族性ALS: 家族内で発症がみられ、特定の遺伝子変異が関係するタイプです。
家族性ALSでは遺伝子変異が関与することがわかっています。一方、孤発性ALSについては、複数の要因が関係している可能性が研究されています。原因をひとつに断定することはできません。
どんな症状?
ALSの症状は、障害が始まる部位や進行の程度によって異なります。代表的な症状として以下が挙げられます
筋力低下:手足に力が入りにくくなる
筋萎縮:筋肉がやせてくる
痙縮:筋肉がつっぱり、動かしにくくなる
歩行障害:足が上がりにくい、歩行が不安定になる
構音障害:発音が不明瞭になる
嚥下障害:食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる
呼吸機能障害:呼吸筋の筋力低下により、換気が難しくなる
ALSの診断・評価・リハビリ
●診断
ALSの診断では、神経学的診察や筋電図などの検査を行い、運動ニューロンの障害を確認するとともに、似た症状を示す他の疾患を除外します。単独の検査だけで確定するわけではありません。
●理学療法評価
筋力:どの筋群に筋力低下があるか
関節可動域(ROM):関節拘縮や可動域制限の有無
筋緊張・痙縮:つっぱりや動作への影響
動作能力:寝返り、起き上がり、立ち上がり、移乗
歩行能力:歩行速度、安定性、転倒リスク
呼吸機能:呼吸状態や息切れ、咳の力など
疼痛・疲労:痛み、運動後や翌日の疲労
ADL:更衣、トイレ、入浴などの自立度
ALSは進行性の疾患であるため、定期的に状態を確認し、変化に合わせて支援内容を見直します。呼吸や嚥下、栄養状態などについては、医師や看護師などの多職種と連携して確認します。
●リハビリテーション
ALSでは、過度な運動負荷によって筋力低下や疲労が悪化する可能性があるため、運動量を慎重に調整します。
日本神経学会のガイドラインでは、軽度から中等度の筋力低下がある筋に対する適度な筋力増強運動や有酸素運動が、一時的に有効である可能性も示されています。一律に運動を禁止するのではなく、個々の状態に応じた実施が大切です。
具体的には、次の点を確認します。
- 運動中に過度な疲労が生じていないか
- 翌日に筋肉痛や疲労感が強く残っていないか
- 呼吸症状が出現・悪化していないか
- 現在の筋力や動作能力に負荷が合っているか
- 本人が希望する生活や活動につながっているか
参考文献
日本神経学会監修,筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン作成委員会編集.筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023.南江堂,2023.

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